文化功労者・日本芸術院会員

島田 章三 展
Shozo Shimada: A Retrospective

■9月16日〜10月30日   ■ 愛知県美術館
■ 11月19日〜12月25日   ■ 横須賀美術館

 文化功労者、日本芸術院会員・島田章三展が愛知県美術館で開催されている。
 油彩76点、デッサン11点、版画20点、陶器7点の合計114点。1954年、東京藝大に入学した年の「からすのいる風景」から、今年の東北大震災の義援の一端として描いた「東北に捧げる十字花」まで、年代を追った大回顧展となった。「東北に捧げる十字花」は今展中(横須賀巡回も含め)チャリティーオークションにかけられており、落札価格全額が義援金として送られるとお聞きした。
 それにしても、100点を超える大個展は初めてのこと。それに準ずる大個展は、平成4年5月のメナード美術館での87点、芸術院会員就任後の平成14年に横須賀文化会館で開催された「語りかけるかたち」での100点があるが、改めて初期の作品から現在までの作品を通覧し、特に印象に残った作品「採果」をピックアップして紹介させていただいた。
 この作品は第11回安井賞を受賞した5年後(昭和47年、39歳)の作品で、受賞の翌年の9月愛知県在外研究員として1年間渡欧し、モンマルトルに滞在、スペインやイタリアを巡った後の大きな区切りとなる作品と言える。数々のキュビズムの実作品との出あいが新たな作品の糸口となったことは間違いないが、ピカソやブラックなどの手法をそのまま持ち込まず、「日本人の言葉(造形)で翻訳する」と決心したと云うが、その着眼が後の島田芸術を確立したと言えよう。

 ともすると、安井賞受賞は当時は文芸の直木賞と同格の芸術賞と見なされており、そのイメージの定着化を強要され受賞の作風を延々と続けてしまう過去の受賞作家は多い。受賞直後の海外研修は、画家として自分の生き方を検証する意味で幸運であったと思われる。帰国(昭和44年9月)後もそうした思いを持ちながら、思いが先行して造形が停滞しており新鮮さが出し切れていなかったようにみえる。
 で、「採果」である。筆者は初めて実作品と対峙した。正直しばし作品の前で釘付けにされた。日常の「かたちびと」の原形の煌めきがそこにあった。瞬間的な筆致、独特な顏の在りよう、色彩対比の大胆さと求心力がある。この作品が生活空間に結びつき、翌年の「愛鳥の日」、「花嫁の構図」へと繋がっていく。 (松)

 

 

 

採 果

1972年 油彩、画布 72.7×53.0cm 個人蔵