山本幸雄展

心の自画像たち

「静 物」

 神戸市長田区といえば、今も阪神大震災の記憶が呼び覚まされる。地震後、大火災にみまわれた長田区の悲惨な光景をひとりの住人として体験した山本幸雄。二元展に出品されてきた彼の「1・17のドラマ」シリーズは、亡くなった多くの人達への鎮魂歌であった。まるで白昼夢のように白い絵具の中に透かされている過去の記憶、飼っていたウサギ、思いでの品々。赤裸々に全てを描くのではなく、描かない中に思いを込めようとした彼流の表現であるが、ある意味水彩風な軽さを指摘される向きもあった。恐らく彼自身も心の隅に転換を求めていたのだろう、また、震災10年という心の区切りも出来たのであろう、油絵具のみで再度絵づくりを始めようとしている。じっくりと対象を写実に捉え、思考空間の中に物の質感を再現する仕事である。
 今年57歳。安定を求める時期にあえて変化を望んだ山本幸雄。今回の個展は、そうした新生の山本幸雄を感じられる展観になる。そんな予感に期待が膨らんでいる。

 

 

■ 8月5日(木)〜10日(火)  
■GINZA TANAKA HALL 4階   GINZA TANAKA(田中貴金属ジュエリー)