山 茂 -油絵個展-大学時代に安保闘争のリーダー的存在であった山茂。数奇な運命に操られるようにして画家となった今でも世界を見る洞察力は健在である。世界を放浪し、そこに在る人間とその背景を実体験の中に刻んできた重みが近年の作品に加味されてきている。今、氏のライフワークとなっている〈MY ASIA〉シリーズがその実践場であり、昨年の「石仏」をテーマとした個展に続いての発表となった。 今回は、中国の黄山の麓にある古民居群・宏村を訪ねて、街そのものが持つ歴史をテーマとした。細い石畳の路地が交錯する迷路に林立する石壁と瓦屋根の家々、幾度となく侵略と殺戮に耐えてきた人々の聚落である。山氏は路地の隅の壁に「抗日」と刻まれたアジ文を見た。日本軍はこの村で何をしたのだろう、という思いが瞬時にわき、当時の人々の怨念が静かに積もった時間の重みを思わずにはいられなかったと言う。 それが、全作を通しての古色を帯びた静謐な街の路地かげに浮かぶ老婆のシルエットとなった。「歴」、「池畔」、「祈り」、「十字砲火」など十数点の中より「水温む」を挙げた。路地の細い水路に映る柔らかな夕色がポイントだ。(松) |
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