●特別展受贈記念 石阪春生 展
昨年(平成17年)、神戸市立小磯記念美術館に石阪春生氏の作品(油彩画35点、素描4点、コラージュ11点)が寄贈された。今展はその受贈記念のお披露目展として企画されたもので、更に作家、及び他の所蔵作品を加えて(全75点)氏の画業50年の足跡を辿ろうという一大回顧展となった。
石阪春生といえば「女のいる風景」である。まるで細密を楽しむかのような構成で、薄塗の絵具で塗り進めている。人形と女達、そしてドライフラワー、置物などが複雑に絡みあい縺れ合いを繰り返し眼前の大画面に立ち返ってくる。時間を失った風景の中、女の瞳だけが空間を切り裂き観者に迫り来る。弊紙の創設(86年)以降ずっとこのシリーズを見続けてきたこととなるが、今回年代順に展示された氏の作品群に接して、このシリーズへの転機が一目瞭然に分かったことは、他の展覧者も一致するところだろう。
小磯画伯も描いたという抽象全盛の時代のアンフォルメルから、徐々に形状を取り戻し、ヨーロッパの建築設計と銅像を切り取ったような「騎士の図表」でブレイクを果たし新制作協会賞受賞、翌年会員に推挙され画家としての地位を確立するが、更に掲載の「青年の譜」へと空間モンタージュの変化をとげる。恐らくこの頃から積極的に女性デッサンを繰り返していたと思える。やはり、目標は師小磯の人物であったことがみてとれる。「ある室内の風景」では余白空間は充分感じられるが、次の「翼の城」を経て「女のいる風景」へと入っていることに異論はないだろう。この間、実に1966〜71年の5年間である。特に興味深い年代だ。 (松)