第67回一水会展より

 

佐伯憲臣

「 川への道 」

 中秋、もしくは浅春のころだろうか、やわらかな陽が道路を白く照り映えさせ、端の枯草を黄に輝かせている。空も明るく、白い雲が糸を引いてのどかな風情をみせているし、空の下の家並の屋根も小さく望める。
 そんなゆったり感の風景をかげる川面と川沿いの黒々とした木立ちが、しっかりと引き締め、それと呼応して、道路をよぎる木の影と、粗末な柵の棒杭の黒が画面にアクセントを添えている。
 格別何ということもない、言ってみれば田園風景としてはどこにでもありそうな平凡な眺めであろう。それだけに貴重とも言えるのだが、だからといって画家は単に田園賛歌や郷愁だけで描いているとも思えない。
 ただこの絵を見ていると画家と同じ視点に立っている、あるいは画中に入りこんでいるような気分になってくる。画家はこの作品に自分の来し方を重ねているのではないだろうか。そして行く末を思っているのではなかろうか。一本の大きな道。先へ行って曲がっている道。陽当たりの良い道に落ちる影。行く手に大きな川、かげる木立ち…。少々深読みすぎる気もするが、そんな感慨をもよおさせる心のこもった作品だ。(中)