全日本美術 ALL JAPAN ARTS
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Work No.36

テンプテーション

第77回水彩連盟展(2018.06)
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 「テンプテーション」とは誘惑、魅惑を意味する言葉だ。左右2枚に描かれた世界はその題名とは裏腹に禍々しさが浸透している。共に薄暗い黄泉の国の境界を思わせる背景であり、左面は、そっと影から忍び寄った死神がささやく甘言に、隠微に微笑む若い女性。永遠の美貌などあり得ない虚楽への誘惑であろう。そこから生まれる虚栄心と美のもつ傲慢さ、危うさ。一方、右面は最愛の夫を亡くしても様々な想いに耐えて、生き抜いてきた老婆の姿。それでも時折幸せだった往時に想いを馳せる人の性。冥界の夫を重ねて「生きる意」を問う。頭上の真っ黒いホールは彼岸への入口であろうか。
 この作品は、最もハイライトの若い女性から老婆、亡き夫、死神までトーンの対比で視点を繋いでおり、インパクトが極めて高い。しかし、じっくりと見ると透けた死神の描写が次第に全体画面を制するように重くなってくる。これこそが作者の狙いだ。人間の多重心理をついたアナザーシリーズから、更に一歩踏み込んだ物語性ある世界が垣間見えた。
○ 水彩連盟会員・新世紀美術協会委員。(松)

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テンプテーション — 高橋重幸