高橋重幸氏の14年間の代表作で綴った一種回顧展、次の段階への区切展である。 武蔵美の卒業を目の前にして中退した彼は、14年間あらゆる職を転々としていたと聞く。闇のような生活からまた、絵の世界へ戻ってきたのは画集で見た室町時代の襖絵であった。300年の時の流れを超越する絵の世界、今自分が死ねば何も生きた証を残せない、自分には絵でしかそれを実現出きるものはない、と痛烈に思った。何のために生まれてきたのだと。 90年に取り憑かれたように描きだし、翌年新世紀展に初出品、奨励賞を受賞、次年には兵庫県展で大賞の知事賞に。奥さんをモデルにじっくりと描き込んだ人間の存在感を「日月抄」として追求、それが人間の輪廻転生の世界「カルマ」へと進化していった。やがてスペインの風に憧れ、現世と来世の境界、「窓」シリーズへと移行するが、実物のモデルから離れ、精神的な深度不足に悩むようになっていた。一昨年のプラドでのリベラの模写から、一大発起して現地のアカデミーでヌードデッサンを再開。再び人間そのものの存在をより深く追う目に変わってきたといえる。来年はマドリでの個展も決まっており、今後の展開に注目だ。(松)
高橋重幸氏の14年間の代表作で綴った一種回顧展、次の段階への区切展である。
武蔵美の卒業を目の前にして中退した彼は、14年間あらゆる職を転々としていたと聞く。闇のような生活からまた、絵の世界へ戻ってきたのは画集で見た室町時代の襖絵であった。300年の時の流れを超越する絵の世界、今自分が死ねば何も生きた証を残せない、自分には絵でしかそれを実現出きるものはない、と痛烈に思った。何のために生まれてきたのだと。
90年に取り憑かれたように描きだし、翌年新世紀展に初出品、奨励賞を受賞、次年には兵庫県展で大賞の知事賞に。奥さんをモデルにじっくりと描き込んだ人間の存在感を「日月抄」として追求、それが人間の輪廻転生の世界「カルマ」へと進化していった。やがてスペインの風に憧れ、現世と来世の境界、「窓」シリーズへと移行するが、実物のモデルから離れ、精神的な深度不足に悩むようになっていた。一昨年のプラドでのリベラの模写から、一大発起して現地のアカデミーでヌードデッサンを再開。再び人間そのものの存在をより深く追う目に変わってきたといえる。来年はマドリでの個展も決まっており、今後の展開に注目だ。(松)